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ゴージャスミラン請け負います?

フィニンベストに関する日本のニュース記事(Yahoo)もあったので、引用します。

<イタリア>買収訴訟で首相創業の企業に980億円賠償命令

10月6日21時11分配信 毎日新聞

【ローマ藤原章生】イタリア最大の出版社買収を巡る民事訴訟で、ミラノ地裁は、ベルルスコーニ首相が興し主要メディアを傘下に置く企業フィニンベストに対し、原告のライバル企業CIRへ約7億5000万ユーロ(980億円相当)の損害賠償を支払う命令を下した。5日、地裁が詳細を発表した。

 裁判はイタリアの2大メディア王の積年の確執が背景にあり、ベルルスコーニ首相は「左翼判事たちの陰謀だ」と批判し、控訴する方針を明らかにした。

 両社は出版社モンダドーリの株式取得を巡り90年から裁判で争い、91年の控訴裁の裁決で首相側のフィニンベストによる獲得が決まった。だがその後、首相の弁護士団が控訴裁の判事を買収していた事実が明るみに出て、95年から捜査が始まり、07年の最高裁で弁護士らに懲役1年半などの判決が下った。首相は時効で刑事責任を免れたが、CIR社は企業イメージの悪化などを理由に損害賠償を求めていた。

 首相の長女が現在社長を務めるフィニンベストは、国内最大の民放局メディアセットやプロサッカーのACミランを傘下に置き、社員は約1万9100人、08年の売上高は約62億ユーロ(8120億円相当)に上る。

 一方、CIRはデベネデッティ社長(74)が皮革会社から興し、傘下に左派系主要紙レプブリカや主要総合週刊誌レスプレッソを置く。社員数は約1万2400人、08年の売上高は約47億ユーロ(6150億円相当)。

 CIR傘下の左派系メディアはこれまで首相の醜聞を厳しく報じてきており、今回の裁判も両者の確執を象徴するものとなった。


ベル爺、過去にもありましたが、また時効で刑事責任を逃れてたのね…。

この地裁判決発表が5日。そして、ターチ氏(日本のニュースではこう記載されているので、以後ターチで)の「ミランを買う意志がある」と語るインタビューが掲載されたスポーツ月刊誌『Guerin Sportivo』が新聞スタンドに並んだのが6日。これはよくできた偶然?それともターチ氏の意図したイメージ戦略? 買収したい相手の訴訟問題は必ず追っているだろうしなあ…と、そんな裏読みさせるような『偶然』でした。

で、そのインタビューからの抜粋記事が、昨日いっせいにイタリアの各メディアに出ました。Corrire.it、Mediaset.it、Tutto Sport.it、affaritaliani.itなど、ほぼ同じ内容。以下はそれらをまとめたもの。

ターチに聞く:「ミランを手に入れる用意がある」

ローマ発 「もしベルルスコーニが売るのなら、ミランを手に入れる用意がある」:これはアルバニア人の石油業者レザルト・ターチが、今日新聞スタンドに並ぶ『Guerin Sportivo』のインタビューで語ったことである。「私はベルルスコーニからミランを奪いたいとは思っていない。しかし、もしそういうことになれば、獲得には非常に関心を持っている」と言う。ミランと同様に、すでに過去にボローニャ獲得に近づいたことのあるアルバニア人石油業者は、ターチ・オイルがすでにミランの株を40%取得しているという数週間前の噂を否定する:「私がすでに株主であるというのは全くのウソだ。ロッソネロのクラブとはスポーツ部門でのつながりを持っているだけ。つまり、シルヴィオ・ベルルスコーニとアドリアーノ・ガッリアーニとの友情を深めていて、『ジュニア・ミラン・キャンプ』と『ミラン・パルク』のような企画で将来の子供のためにコラボレーションするプログラムなどがある。我々はあなた方の国の現在最もメジャーな会社のパートナーとなるために、イタリアのエネルギー産業にもっと投資したいと思っている」。ターチの最近の出来事として、ボローニャに入ることがなかったことだ:「獲得を確定しなかった本当の理由については明らかにできない」。

(Tutto Sport.it他 09/10/06)


091007a
↑『ベルルスコーニ帝国』。傘下企業の数字は、各企業におけるフィニンベストの株所有率。
つまり100%保有しているミランはフィニンベストが売却しやすい物件ってことですね…。


091007b
↑ミランの総売上高の内訳(07/08)。総額2億950万ユーロ。
テレビ放映権、版権ビジネス、チケット代の順。意外にBiglietti(チケット代)は少ないのね。


今日付のGazzettaもこの話題を真っ先に持って来ていました。まずは電話取材による最新のターチ氏のインタビュー。

襲撃するターチ
「ミランを手に入れるための7億ユーロを準備。それから補強」

アルバニア人:「私はベルルスコーニにクラブを譲ってくれるように頼んだ。今は期待して待っている」

ミラノ発 時の人。すでに既知の。わずか38歳の石油業者レザルト・ターチはミランを買いたいと思っている。どのように、なぜかを知りたい。我々はイタリアにおける彼の弁護士Alberto Zilianiの事務所で、電話で彼の生の声でそれをたずねた。そこには彼の友人でアドバイザーのAltin Tahoもいた。会話は邪魔されることなく続いた。最後の時だけ、レザルトは急がせた:「申し訳ない。でもアルバニア首相との約束があってね」。彼のイタリア語は流暢で、上品である。

—ミラン売却に関して、フィニンヴェストから新たなニュースはありましたか?

「ない、ここ数日間、何も変わってはいないよ」

—モンダドーリ社の判決文については知っていますか?

「ええ、読んだ。それどころか、私の友人シルヴィオ・ベルルスコーニへ連帯の気持ちをお伝えする機会を得た」

—どのくらい前からベルルスコーニを知っているのですか?

「数年前から。私はアドリアーノ・ガッリアーニも良く知っている:両者とも私が評価などできない」

—あなたはミランを獲得する考えをもうベルルスコーニに明かしましたか?

「ええ、話した。彼は売りたいとは思わないと言った。しかし、そのようなことになったら、私のオファーを考慮に入れるだろうということはわかっている」

—あなたはベルルスコーニが考えを変えると思いますか?

「私たちは今、世界の誰よりも勝利したプレジデンテ(首相もしくは会長)について話しているんだ。繰り返し不可能な歴史だよ。しかし、おそらくミランがかつてのグループのようには、もう戦略的ではないというのも真実だ」

—ミランに7億ユーロの値段が付いているのは知っていますか? そして、そうした金額を費やす用意がありますか?

「なんの問題もない。私のグループは重要な契約をかわしたり、先を見越して投資することに慣れている。それに、このような勝利者の考えは合意を得る事ができないわけがない。そのために、私は必要な出資金を持つことができることを確約する」

—ロッソネロのようなクラブにとっては、マネージメントと選手の増強のために相当の投資が必要です。

「それはとても良くわかっているよ。それに私はミランがふさわしい場所、世界最高峰に位置し続けるためにあらゆることをするだろうことを保証する」

—シルヴィオ・ベルルスコーニはまだミランに足を入れて置きたいと思います。

「この話については、あまりにも先走りたくはない。しかし、私の熱望が誰にもプレッシャーを与えたくないということははっきりさせておく。私にとって、シルヴィオ・ベルルスコーニはミランにおける基準点であり続けなければならない。同様に、他にアドリアーノ・ガッリアーニも」

—つまり?

「私はどんな解決法にもオープンだ。私の方が少ない投資分担だけにさせるのか、あるいは彼らの方が少ない投資分担で残ることを選ぶのか。いずれにしても、私は新しい道に彼らを巻き込むだろう」

—たった2000万ユーロでボローニャ獲得から撤退した後に、こんなに高額な指令にどうやって立ち向かうのでしょう?

「それは誤解だと注意して欲しい。あれは全てボローニャのために行った事だ。しかしそれは経済的な原因で心変わりしたわけではない。だがしかし、私のグループは70億の請求書を書くし、正しいステップを常に良く考えるんだ」

—ミラン獲得をじっと待つことを、誰かにアドバイスされましたか?

「言ってみれば、ロッソネロ・ティフォージとしては、まだちょっと辛抱する方がいいだろうということだよ。もしその間にもっとすばらしい扉を開けることができるなら、どうしてボローニャあたりをうろうろしているだろうか?(訳者注:ミラン獲得の可能性が見えたから、ボローニャ獲得をやめた?)」

—あなたのミランへの情熱はどのように生まれましたか?

「1990年代にテレビのおかげで。それまでアルバニアでは外国のテレビを見られなかったので、私はロッソネロのカラーに夢中になった。私の父、ムスターファの情熱もそうだ」

—しかし、それからイタリアへ勉強に来ました。

「そう、私はNovi Ligure(ピエモンテ州のノーヴィ・リーグレ)に住んで、あの数年間、私はサン・シーロに通い始めたんだよ」

—誰があなたのアイドルでしたか?

「もちろんマルコ・ファン・バステンだ。しかしミランには決して欠く事ができないスターたちがいる」

—残念ながら、カカを失ったばかりです。

「そう、私はファンとして非常に悲しんでいる、みなさんと同様に。みんなにとって大きな喪失だった。しかしこの選択を示唆した企業家としての理由は理解できる」

—一方、レオナルドのチームは苦しんでいます。

「まだ時間がたっていない。しかし、クラブはこの難しい状況もうまくマネージする方法をわかるだろうと確信している」

—ミランの次の試合を見ますか?

「もちろん、私はレアル×ミラン戦のためにベルナベウへ行く。もう一人のサッカー界の重要人物フロレンティーノ・ペレスとも知り合う機会があるだろう。私の夢は第3回ターチ・オイル杯のために、ペジェグリーニのチームもティラーナ(アルバニアの首都)へ連れてくることだ。ベルルスコーニとガッリアーニはすでに今年もロッソネリが出場してくれることを確約してくれている」

—2つの石油業者、モラッティとガッローネ。彼らが順位でトップです。あなたはそこに到達しますか?

「我々は段階をおって進む。もちろん、彼らからも習わなくてはならない。他の人から良いところを得ることはいつだってうれしいものだ」

—サッカーの他に情熱を傾けているものは?

「少年時代からチェスで遊んでいる。今は(アルバニアの)リーグの会長職を受けている。非常にうれしいね」

—Ci parli della sua Italia

「ナポリ音楽がとても好きだ。特にNino D’Angeloが」

—もしミランを獲得できなかったら、サッカー界に入るというプロジェクトから撤退しますか?

「それはまた、そうなった時のことだ。私はイタリアに惚れ込んでいる。ミランが何よりも優先されるよ。でもダメだったら…」

(Gazzetta dello Sport 09/10/07 第2面)


さすがにグランデ・ミランの遺産はいろんなとこで役に立つのですね。彼がオーナーになったら、バステン監督誕生ですかっ!

では、このターチ氏の履歴書はどんなものか?という記事を。

サッカーボールと共にある実業家
スイスで下働きしていたアルバニア人の石油業者の奇妙な成り上がり


Cavaliere(騎士、ベルルスコーニのあだ名)からIngegnere(工学士、ターチのこと)へ。彼の庭ではそう呼ばれる。しかしレザルト・ターチ本人は、学士に関してはそれに近づいただけだと言う。イタリアに9年間住んでいた間は勉強し、働き(ノーヴィ・リーグレのカヴール・ピッツァ店でウェイターも)、それから21世紀初めにアルバニアへ戻り、10年もしないうちに帝国を築き上げた。

石油 Ersekë(JamesとJohn Belushiの家族が起源の街)生まれの38歳はアルバニアの石油市場の半分を支配するグループを率いている。それは3つの幹を持っている。ターチ・オイルは2000年に起業され(従業員400人、総売上高2億ユーロ)、100のガソリンポンプ(スタンド?)で流通する事業。アニカ・エンタープライズ(34歳の妹の名前をつけた)はジュネーヴに本拠を置き、アメリカ—スイス合弁企業体の一部をなし、600の配給業者で38の石油大企業ブランドのための輸出入を管理している。最後に、政治的に強固なコネクションのおかげで、昨年、ターチは国営石油会社Armoの85%を買収。それは1億2800万ユーロという値段のために、政治的論争を巻き起こした。特価で民営化? 間違いなくアルバニアからその準備資産について、議論の的のニュースが届く。一方、Armo(従業員1506人、総売上高10億ユーロ)はアルバニアの石油の精製、供給、マーケティング、販売の50%をカバーする。

情熱 野心がイタリア、カルチョ(母国では76歳の父ムスターファと共に、アルバニアのセリエCからAヘと昇格させたチームKs Gramoziを所有する)、ミランへ取り憑かれることを助長する。他のご執心はパステル色のジャケットと家族:彼には生後7ヶ月の赤ちゃんがいる。ボローニャの獲得交渉でCasteldeboleに現れた時は、黒のメルセデス4から15時に降り立った。しかしそれから何も起こらなかった。今回はどうなるか、誰が知ろうか。

(Gazzetta dello Sport 09/10/07 第2面)


やっぱり彼も成り上がりで、いろいろうさんくさいわ〜w ちなみに従業員が少な過ぎる気がするんですが、記事には『400 dipendenti』って書いてありました。

ターチ・オイルのウェブサイトはこちら。国営企業だったARMOを買収したのは、関連企業の『Anika Enterprise』です。

Wikipediaで調べると、アルバニアとイタリアとの関わりは深く、1939年にはイタリアの国王が即位して、親伊の傀儡政権が誕生しておりました。そのためか、外国語としてイタリア語を話せる人が多いとか。輸出の74.9%がイタリア向けとか。そんな背景がありながら、第二次世界大戦後には社会主義国となり、近隣とは鎖国状態で、長年欧州最貧国に。そして1992年に民主化、市場経済が導入された、ちょうどその時にターチ氏はイタリアで勉強。経済回復しつつも、社会主義国家から激変した市場経済で大もうけするスキがある時期、その9年間で資産を貯めたらしく、2000年に帰国して、ターチ・オイルを設立。

イタリアのターチ関連の記事に寄せられているコメントには、「ベルルスコーニよ、早く売れ!」というものから、「イングランドのクラブと同じになる気か、やめろ!」という意見まで様々。東欧に対する偏見もありそう。

ほんとはイタリア国内のオーナーがいいんでしょうが、ちっとやそっとの富豪や企業じゃ背負いきれない、ゴージャスな浪費だものねえ。ミランさん、お金かかります。

この報道に対して、さっそくフィニンヴェストはミラン売却の噂を否定しています。すぐには何か起こらないかもしれないけれど、ほんとに今がミラン変革期なのだ〜と実感です。